事業期間:2012年度〜2016年度

2015.01.20 │ voice合宿レポート:学生自らが正解のない課題に取り組み、問題解決プロセスを実践的に学ぶ場に

ビジネスアプリケーション分野では、筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだて未来大学の3拠点を中心に各地で合宿を開催しました。今回は、公立はこだて未来大学の短期集中合宿について紹介します。

異なる大学の学生同士混成チームでの協働開発

ビジネスアプリケーション分野では、先端情報技術や情報インフラを活用して、ビジネスニーズや社会ニーズに対する実践的問題解決ができる人材を育成するための教育プログラムを進めています。

公立はこだて未来大学では、参加大学(会津大学、同志社大学、室蘭工業大学)も含め、25名の学生が参加しています。短期集中合宿は3つの演習から構成され、全体を通してビジネスアプリケーション開発における基礎的スキルや実践力を獲得します。具体的には、デザイン手法を使って課題発見力や提案力を身につけ、ファシリテーションスキルによりチーム力を強化し、アプリケーション開発の技術を獲得しながらチームで分散開発を行います。

すべての演習はそれぞれチームに分かれてPBL形式で行なわれます。各チームが複数大学の学生から構成される点がこのPBLの特徴です。専門分野も違う他大学の学生との協働体験や成果発表を通じて互いに刺激し合うことで、学生の視野は広がっていると感じます。enPiTから離れた研究や開発の場面でもこの体験が活かされています。

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デザイン手法で理解する本当のニーズとはなにか?

「ビジネスサービスデザイン実践(前半)」では、イノベーションのための問題発見力や発想力、企画力を鍛えるのがねらいです。そのために、「現場に出る」「観察する」「外化する」「アイデアバリエーションを出す」などに活動の重心を置き、地域に密着したさまざまなテーマに毎年取り組んでいます。今年は函館市の市電をテーマにした「新しい市電のサービスデザイン」に取り組みました。6チームに分かれて4日間で市電や街を調査し、新しいサービスをジオラマや物語を用いて提案しました。函館市西部地区にある現在は営業していない銭湯「大黒湯」を活動基地として、市電関係者、市民、観光客にインタビューし、スケッチを通して参与観察を行いました。机上で問題に取り組むのではなく、学生自らが地域の中に入ることで、街の人を知り人々の生活や価値観に触れ、周りを取り巻くものとの関係性に気付くことができました。街の人々、つまりユーザーの価値体系を知る体験は、アプリケーション開発における「本当のニーズとは何か?」を考えるきっかけになったのではないでしょうか。

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ファシリテーションでさらにチーム力を強化!

「ビジネスサービスデザイン実践(後半)」では、チーム活動をより活性化するため、クラウドコンピューティング分野から毛利幸雄特任准教授を迎えてファシリテーションスキルを学びました。メンバーの自律的な活動を促し議論を活性化しつつ、結論を引き出す際に必要となるコンセンサスを効率的に導くスキルを獲得しました。他の演習でも学生は自主的に「パーキングロッド」や「N3投票」などの手法を積極的に活用しています。

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遠隔地との分散開発に適したコミュニケーション方法を探る

「ビジネスアプリケーション開発基礎演習」は、ビジネスアプリケーション開発のための具体的な基礎技術を学ぶ演習です。この演習では社会のニーズから少し離れて、「自分たちが使いたくなるアプリケーション」を開発します。今回は4チームに分かれ、5日間で開発環境の構築から開発プロセス、プロジェクトマネジメントなどを一通り学習し、最終的にiPad等で実際に使えるアプリケーションを開発しました。分散開発という困難な環境下で、学生自身の発案により①ビデオ通話で1日3回定期的に進捗報告して作業分担を明確にし、②「30分迷ったら相手に相談するルール」を作って作業の遅れを減らし、③ホワイトボードを相手と同じ目線で画面共有(Skype)することで、遠隔地を意識させない会議をするなどの工夫をして開発を進めました。

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執筆者
公立はこだて未来大学 情報アーキテクチャ学科
特任助教
木塚 あゆみ