事業期間:2012年度〜2016年度

2015.01.13 │ voice合宿レポート:君がリーダー! 実践演習を通じた未来のセキュリティスペシャリスト養成

セキュリティ分野(SecCap)では、技術主体から社会科学主体まで、幅広いセキュリティ実践力をカバーする約20のセキュリティ実践演習モジュールを用意し、8月、9月に合宿を開催しました。今回は東北大学で行われた合宿の様子を中心にご紹介します。

さまざまなジャンルからの受講生にあわせた演習を提供

SecCapは、さまざまなジャンルからの受講生が、それぞれが目指すキャリアパスに合わせて演習を受講しています。そのため、SecCapでは、演習をこなすために必要なセキュリティ基礎力を身に付ける共通科目(情報セキュリティ大学院大学奈良先端科学技術大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学)、基礎科目(各連携大学ごと)を提供するとともに、演習において個別に必要となる知識を教授しています。例えば、東北大学開講のハードウェアセキュリティ演習では、セキュリティに関する事前知識に加え、電子回路、電磁気学、計測工学などの知識も必要となることから、理工系以外の学部を卒業した学生向けに、演習中に適宜講義を行い、深い理解を促しています。

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演習教材のパッケージ化と連携大学・参加大学への提供

連携大学と参加大学との間で演習を共有するために、SecCapでは演習科目のパッケージ化を進めています。今年度は、ハードウェアセキュリティ演習において、演習で必要となる暗号モジュールおよびIPコア、解析ソフトウェアなどを含む演習セットアップと講義資料を合わせた演習教材をパッケージ化し、奈良先端科学技術大学院大学に提供しました。また、奈良先端科学技術大学院大学の無線LANセキュリティ演習のパッケージ化も進め、慶應義塾大学へ提供し、演習を実施しました。

演習を通じた教員のFD

今夏行われた演習では、学生の受講に加えて教員のFDも実施されました。例えば、東北大学開講のハードウェアセキュリティ演習には、セキュリティ分野教員5名(奈良先端科学技術大学院大学、慶應義塾大学)が参加し、ハードウェアセキュリティの講義、演習実施方法について情報を共有しました。そして、演習に参加した奈良先端科学技術大学院大学では、FDの参加教員が本演習を自大学で実施しました。関西で初めて実施された本演習には、奈良先端科学技術大学院大学の学生に加え、情報セキュリティ大学院大学の学生および今年度から参加大学として加わった九州産業大学の学生が参加し、普段離れた場所で、共通科目・基礎科目を受講する学生たちが1ヶ所に集まり、協力しあって演習に取り組みました。また、奈良先端科学技術大学院大学にて無線LANセキュリティ演習に関するFDを受けた慶應義塾大学の教員も自大学において当該演習を実施しました。

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SecCap修了生および教員の活躍

SecCap通じて、幅広いセキュリティ分野の最新技術や知識を習得した修了生も活躍しています。SecCap 1期生である北陸先端科学技術大学院大学の伊藤竜馬さん、情報セキュリティ大学院大学の田中恭之さんは、SecCapコースで学んだ知見を自身の研究に生かし、Workshop on Information Security Applications 2014、SafeConfig 2014:Cyber Security Analytics and Automationにそれぞれの論文が採択されました。同じく1期生である慶應義塾大学の廣瀬雅治さん、野尻梢さんも日本ソフトウェア科学会第31回大会において発表を行いました。また、東京大学の平原秀一さん、寺尾拓さんはトレンドマイクロ プログラミングコンテスト2014において数ある難関を突破し、それぞれ3位と7位に入賞しました。さらに、SecCapコースの教員の取り組みも評価され、北陸先端科学技術大学院大学の宮地充子教授が「科学技術分野の文部科学大臣表彰 研究部門 科学技術賞」を受賞するとともに奈良先端科学技術大学院大学の猪俣敦夫准教授が(ISC)2において「アジア・パシフィックISLA」を受賞しました。

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広報活動および国際連携の計画

SecCapコースの教育成果を本コースに関連する企業や研究者が参加する国際会議や国内学会で発表し、アピールしました。さらに、セキュリティに関する先進的な実践講義を行っている海外の大学(ベルギー、フランスなど)の演習教材、講義資料、演習の実施形態などの教育知見を授業の見学および教員間のディスカッションを通じて習得し、演習科目の一層の充実を図る計画を進めています。

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執筆者
東北大学 大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻 実践的情報教育推進室
准教授
林 優一