事業期間:2012年度〜2016年度

2015.01.06 │ voice合宿レポート:ビッグデータ・超上流に焦点をあて、現場を学ぶ

クラウドコンピューティング分野では、東日本と西日本それぞれで合宿を行いました。東日本では、9月にクラウド実践道場(東京大学)とCloudBauhaus(東京工業大学)が連携し、西日本では、8月と9月に Cloud Spiral(大阪大学、神戸大学)とCloud Q9(九州工業大学)が連携して開催しました。ここでは、東日本で行われた合宿(場所:国立情報学研究所およびマホロバマインズ三浦)をご紹介します。

Big DataにChallenge!

合宿は3部構成で行われました。

第1部はHadoopなどの大規模データ処理基盤を利用したビッグデータの利活用手法を学ぶ「Webアプリケーション開発演習」(5日間)です。今回、ビッグデータプログラミングチャレンジ(略称 BIGCHA)というコンテストとして開催されました。「BIGCHA」には東京大学・東京工業大学以外の学生も含め、総勢59名が参加しました。初日のHadoopに関する講義の後、4~5人のチームに分かれ、企業が提供する実データを元に、ビッグデータを活用するアプリケーションを開発しました。アイデア出しからスムーズにいくチーム、実装開始後にアイデアが二転三転するチームなど、チームによって紆余曲折があったようです。また、実装したデータ処理プログラムを8時間走らせたのにエラーが発生し落ちた、というビッグデータならではの悲劇も。山あり谷ありでしたが、最終日には全チームが素晴らしいプレゼンとデモを実施しました。

さらに、楽天株式会社、株式会社サイバーエージェント、グーグル株式会社、株式会社ブレインパッド、ヤフー株式会社、バンプレコーダー株式会社による企業講演が行われました。株式会社リクルートホールディングス、株式会社ディー・エヌ・エーからはランチ提供があり、さまざまな形で企業の方と交流する機会となりました。参加者からは「すげえ楽しかったです。学生オンリーだから敷居低かったし、その割にみんなすげえ面白い物作るもんな。(Twitter #bigcha)」という嬉しい感想もありました。

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ユーザー目線の獲得

第2部はマホロバマインズ三浦に場所を移し、2泊3日で「超上流」にチャレンジしました。株式会社日立製作所Exアプローチ推進部の協力を得て、企業で実際に使っている手法をベースに進行しました。テーマは「マホロバマインズ三浦を120%楽しむWebサービス」。マホロバマインズ三浦は滞在型リゾートホテルで、観光目的だけでなく、企業の研修や大学のゼミでもよく利用されています。今回の合宿では、5~6人でチームを構成し、「ユーザー目線を獲得し、要件を定義する」という目標に向かってミニPBLを実施しました。

初日、アイスブレイクでチームがほぐれたところで、Step1「現状を把握する」からスタート。各チームに割り当てられたペルソナ(ユーザーモデル)のニーズをディスカッションします。ここでは、顧客の行動と喜び・要求・要望を想定して付箋にどんどん書き出します。今回のペルソナは「大学3年生、31歳主婦、35歳メーカーSE、65歳シニア男性」の4パターンです。続いて、マホロバマインズ三浦の魅力・強みを洗い出し、並行してフィールドリサーチも行いました。各チームが質問を用意し、実際に働いている方にインタビューをします。知らない人に声をかけるのはなかなか勇気がいったようです。偶然、営業部長にインタビューしたチームもあり、非常に貴重な体験となりました。

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2日目はStep2「価値と課題の探索」、Step3「具体的なアイデアの検討」です。アイデアは「ペルソナにとって嬉しいサービス」として提案書にまとめました。

最終日はマホロバマインズ三浦の経営層の方の前で提案プレゼンです。7分の発表に8分の質疑応答。厳しい質問もあり、緊張感に包まれた時間となりました。

マホロバマインズ三浦の方からは「どの提案もよく考えられていて、自分たちの仕事を見直すよいキッカケになった」と嬉しいお言葉をいただきました。情報系の学生は、実装することに目線を置きがちですが、そのシステムやサービスを誰が使うのか、どんな価値を生み出すのかをじっくり考えたことは、とてもよい経験になったと思います。慣れないことで苦労した人もいるようですが、きっと今後に活きてくることでしょう。この3日間、株式会社アカリクによるミニ講演、サイボウズ株式会社の先輩体験談、そしてギルドワークス株式会社の企業講演もありました。いずれも「ITエンジニアとしてシステム開発にどう取り組むか」という姿勢に繋がるお話でした。特にギルドワークス株式会社の市谷さんからは「正しいものを正しく作れるか?」という含蓄のある問いかけもあり、ITエンジニアの姿勢について考えさせられる内容でした。

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第3部は国立情報学研究所にて「分散システム基礎とクラウドでの活用」に関する2日間の集中講義を行いました。この集中講義では、分散システムの構成に関する知識を改めて整理することができました。

超上流から実装まで、幅広い内容をカバーした合宿でしたが、受講生からは、他大学とも交流でき、通常の講義では得られない貴重な体験ができた、という意見が数多く寄せられました。この合宿での経験をこれからに繋げてもらえれば、と思います。

Morimoto

執筆者
東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻 
特任講師 
森本 千佳子