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2013.09.11 │ voiceインタビュー:PBL修了生に聞く~仕事ですぐに使えるスキルの修得と人脈作り

PBLのことは実際に受講した学生の方から聞くのが一番。ということで、このシリーズでは、これまでにPBLを受講された学生の皆さんにインタビューを行い、受講動機や実際に受講後に感じたこと、メリット、デメリットなどを伺います。今回は、セキュリティ分野においてPBLに相当するISSスクエアの分科会活動に参加された情報セキュリティ大学院大学の4名の学生の方にお話を伺いました。

PBL修了生に聞く~仕事ですぐに使えるスキルの修得と人脈作り

自己紹介をお願いいたします。

林:個人研究の内容はAndroidアプリケーション利用の安全性を高めるアプリケーション動作の「見える化」です。
長内:現職(NTTソフトウェアに在職)ではセキュリティの技術開発の部門に属しています。Hadoop やビッグデータの研究開発を中心とした業務に従事しています。大学院では、企業間情報セキュリティ連携アーキテクチャに関する検討をテーマに研究を行なっています。
麻生:現職(NTT東日本に在職)では、人事部に所属しています。以前はサービス企画系業務に従事していました。研究内容はセンサーデータを活用する社会に向けたプライバシーに関わる課題の多角的考察です。
羽田:NTTコミュニケーションズに在籍しています。解析済みマルウェアとの差分抽出による静的解析の効率化手法の提案が研究テーマです。

この大学院を選択した理由を教えてください。

林:元々プログラミングが好きで、将来は、製品を開発する業務に従事したいと考えています。その前に、セキュリティのことをしっかりと学びたいと思い、この大学院に入学しました。「情報セキュリティ」をキーワードにネットで検索をしたところ、最初に出てきたのが本大学院で、情報セキュリティを専門としている大学はここだけであることを知り、選びました。
長内:私は職場の上司の推薦もあり、こちらに入学しました。
麻生:私の場合は、社内留学制度への応募がきっかけです。
羽田:2年前に大学院への進学を勧められました。当時は漠然とクラウドを学びたいと考えていたのですが、最終的にはマルウェアの解析に関わるようになりました。

修了されたPBLの内容について教えてください。

林:ISSスクエアではネットワーク分科会に属しており、解析手法などの実践的なスキルを学びました。チームメンバーは20~30名程度です。その応用の場としてCTFにもチャレンジしています。
長内:システム分科会に属していました。ビッグデータとセキュリティの関係を研究しています。調査、技術情報の翻訳をチームで行いました。10名程度のチームです。
麻生:マネジメント分科会に属しています。主にケーススタディが中心でブリジストンのリスク管理問題等をディベートしました。5名でチームを構成しています。
羽田:ネットワーク分科会に属しています。7~8つのCTFに参加し、実践力を磨いてきました。チームの人数は20~30名程度です。

PBLを選択した理由、動機、重視したことは何ですか?

林:自身のスキルアップが主たる目的です。
長内:修士論文で自分自身が取組むテーマの絞り込みはこれからですが、自分の研究テーマに関わらず興味のあるテーマを選択し、知識の幅を広げられることですね
麻生:これまで携わっていたサービス業務との関係から、センサーデータを集めたサービスを企画しており、その時の知見が生かせると思ったからです。
羽田:以前から興味はあったのですがなかなか手をつけられなかったことがマルウェアの解析でした。2年間でマルウェアの解析にチャレンジしてみたいと思い、選択しました。会社では業務上、自らの手を動かす仕事がありませんでしたが、大学ではそれができることが魅力でした。

受講前に期待したこと、また不安に感じていたことは何ですか?

林:元々、ITスキルがあったわけではなく、その点が不安でした。実際には、周囲の手厚いサポートもあり、安心して受講しています。
長内:入学の時期と新規業務に従事するタイミングが重なり、未だに多忙な日々です。業務と学業の両立が難しいです。
麻生:理系大学出身ですが、会社では技術職から離れていたので技術スキル不足が不安でした。
羽田:不安な面として業務と学業の両立がありました。最初は業務の調整が難しかったです。現在は問題でなくなってきました。

PBLを受講した感想を教えてください。

林:ネットワーク分科会は活気もあってとても満足しています。
長内:チームで協力して目標を達成できたことですね。また、他大学生との交流が活発に行われたこともよかったです。ただし、社会人学生で研究と分科会活動を両立させるには時間が圧倒的に足りません。分科会全体で集まる機会は年に5回しかなかったので、もう少し議論する時間が欲しかったなと思います。
麻生:過去に起こった事例を取り上げての、ディベート形式での講義スタイルに、とても満足しています。欲を言えば、せっかく学んだものを実践する場がないのが残念でした。ロールプレイングをやってもよかったのかもしれません。
羽田:PBLの一環として取り組んだCTFはとことん自分のスキルを追求できるのでモチベーションを維持する上でもとてもよいと思います。チームとして取り組めたこともプラスになっています。CTFのスキルを後輩に継承することが実は大きな課題かもしれません。

PBLのメリット・デメリットはどこにあると思いますか?

林:多くの方々との交流があり、さまざまな意見が聞けることはメリットですね。PBLは受講生の意気込みにかなり左右される形式といえます。CTFの準備は各自で行いますので、本人の考え方次第で成果が大きく変わると思います。
長内:研究テーマや会社での業務とは別なことをやることもあるので、体力的にきついこともあります。ただ、一人だったらやらないテーマをチームで取り組める点は、大きなメリットといえます。
麻生:PBLは、自主的に行動をしないとうまくまわりません。5回の分科会の中で自己表現は重要でしたが、そのための事前準備にどれだけ力を注げるかは個人差があると思います。
羽田:人脈の広がりが大きなポイントですね。モチベーションのある人、この環境を活かせる人に薦めたいです。

実践的教育(enPiT)に期待することは何でしょうか?問

林:世の中で使えるものを作る、そのために手を動かす内容であることです。理論を学ぶだけならリモートで良いと思います。
長内:先生、学生、産業界などとの人的交流が活発になることに期待します。
麻生:仕事ですぐに使えるスキル。知識というよりもスキルを身につけることですね。就職に直結するとか、学生、教員を含めて他大学との交流の機会が与えられることに期待します。
羽田:そこに行かなければ学べないことがある、環境がそこにしかない、先生とディスカッションできる機会がそこでしかないことです。他でできるのであればわざわざ行かないと思います。

講師には何を期待しますか?

林:成功談、失敗談を含めた先人の知恵、経験知識をふんだんに盛り込んで欲しいですね。
長内:教科書的な知識よりも、現場の実態に関することを知りたいです。型にとらわれない教え方を期待します。
麻生:実践的な教育に通じるような経験談、現場事情を期待します。
羽田:本コースの修了後のイメージが明確であることです。修了生の声、修了生の実際があると良いです。

受講するとした場合の懸念事項がありますか?

林:受講条件というか、ベースラインの知識レベル、目安が必要です。もしそこまで達していなければ自学自習する必要があります。
長内:金銭面の課題です。遠方での受講となると、宿泊代までも含めた補助が出ると助かります。短期間でスキルが本当に身につくのかが不安なのでその保証が欲しいです。またカリキュラムをもっと具体的にしてほしいです。
麻生:私も費用面での補助ですね。また、修了後のイメージが明確にならないと(就職に直結するのか、研究が進むのかなど)受講しないと思います。逆に言えば、自分の希望とマッチしていれば自己負担でも受けると思います。

ありがとうございました。

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左から、羽田 大樹さん(現職:NTTコミュニケーションズ)、林 里香さん、麻生 享路さん(現職:NTT東日本)、長内 仁さん(現職:NTTソフトウェア)(2013年2月当時)

(インタビュー・文 西村一彦)